第14回佐渡島一周エコジャーニーウルトラ遠足(とおあし)

はじめに

2019年9月21日〜22日、佐渡島一周208kmの遠足に挑戦した。このイベントは文字通り佐渡島を一周するコースを走る企画で、制限時間は48時間。直前2年間に100km以上のウルトラマラソンを完走していることが参加資格となっている。事前に、参加者名簿と各自の参加資格レースの結果が送られてきた。かなりの方がすでに佐渡を走っておられ、そのほかにも川の道、小江戸大江戸、萩往還など著名レースがずらりと並んで壮観であった。

 

他の200kmマラソンに比べると、佐渡の制限時間は長く、超ウルトラへの入門と位置付けられているようだ。さらに、参加者の多くはスタート・ゴール地点の「ホテルめおと」に宿泊し、前日金曜日の夕食(前夜祭)から、ゴール後月曜日の朝食(打ち上げ)までを共に過ごすので、移動日も含めて4日間の非日常を過ごすという特徴もある。

 

これまでのランニング最長距離は、2018年チャレンジ富士五湖の118km。今回は初の200km挑戦で、一体自分の身体がどうなるのか見当がつかず、不安を抱えながらの参加となった。

事前には、特別な練習はせず、週40-50km程度のジョグが中心。夏場は月1回程度のトレイルランレース(50-75km程度)に参加、また比較的長距離の登山もして、12-13時間程度継続して動くことには慣れていたと思う。

 

「遠足」経過

スタートから50km

 

9月21日(土)午前6時スタート。

コースは、ほぼ県道45号線、通称佐渡一週線に沿って進む。

とにかく足の負担を抑えるように、ゆっくり、静かに走り始めた。最近のウルトラマラソン(2019茨城100km)では、キロ6分で巡航したが、これで200kmは明らかに無理なので、キロ7分半から8分を目安とした。

 

実際のペースをグラフにしてみる。その中で走っている時間(緑:時速6.5km以上)、歩いている時間(オレンジ:時速3-6.5km)、止まっている時間(青:時速3km以下)に分けてみた。トンネルなどで位置情報が取得できていない区間(例えば22km)は正しいペースが得られていないが、ちょっとした休憩なども一眼でわかりやすい。例えば、Z坂は2km近くにわたって歩いたこともわかる。

f:id:Y4H:20191003105356p:plain

スタートからしばらくは、緑の時間が長く、ほとんど走っていることがわかる。1キロあたり450秒(7分30秒)なので、まずまず予定通り。途中の上り坂で、逞しい足で走る70代の大先輩ランナーを追い越した際、「(走りが)軽いねえ!」と声をかけていただいた。しばらく話を伺うと、すでに佐渡は何度も走っていて、以前は32時間でゴールしていたとか。しばらく一緒に走ったが、大先輩のペースがわずかに早く、少しずつ離れた。

 

最初の休憩は14kmの「甘酒」。尖閣湾の絶景を眺めた後、「尖閣湾揚島遊園売店」で、毎年甘酒やコーヒーを振舞ってくれるようだ。冷たい甘酒が最高に美味しかった。

天候を心配していたが、この時点では晴れ間も多く、最高の景色、最高のコンディションだった。

第1エイドは30km地点。8:54着。ここで最初の大休止。シューズを脱いで建物に入り、うどんとおにぎりを食べる。しばらく休んで出発しようとすると、先ほどの先輩ランナーが到着。どうやら途中で追い越したらしい。先輩曰く、「佐渡はフルマラソンの9倍、100kmの3倍の時間でゴールできる」とのこと。「あなたは36時間で行けるよ」とありがたいお言葉だったが、いやいや、そんなにうまくは行かないだろう。

再出発してしばらくするとフルマラソンの距離を5:46で通過。一般的なマラソンの制限時間に近いが、体感的にはのんびりしたとはあまり感じず、そこそこしっかり走ったし、疲労もそれなりに蓄積されてきている。

しばらく走ると、Z坂の手前で10人くらいのランナーの集団が集まっているのが見えてくる。「民宿たにぐち」の売店だった。おかみさんがランナーの為に選んだというアイスを購入。柑橘系の味はとても美味しい。ビールを開けている強者もたくさんおられたが、初心者は、まずは走りを優先にする。

Z坂(跳坂)は、景色を眺めながら歩く。

50kmから100km

f:id:Y4H:20191003105436p:plain

Z坂をやり過ごしてしばらくすると大野亀への上りに差し掛かる。第1エイドのあとは手持ちの飴やスポーツ羊羹を食べていたが、かなり空腹を感じていた。登りきったところの大野亀ロッジはカレーが美味しいとの評判。迷わず注文し、空腹を満たす。

 再スタートしてすぐに45号線を離れ、海岸に降りる。このコース唯一のちょっとしたガレ場を進む。その後、本来のコースでは、舗装路をしばらく進んで45号線に戻るのだが、前のランナーについて行ってトレイルを登り始めた。後ろの人に「違いますよ」と声をかけられ、間違えたことに気づいた。確かに地図を見るとトレイルではなく海沿いの道を進むことになっている。どうやら、ほかにも間違えて登ってしまった人はいたようだが、最終的にはどちらも45号線に戻る。

間もなく第2エイド(60km)に到着。14:55。第1エイド到着後6時間かかった。

第2エイドでもうどんとおにぎり、そして笹団子を頂いた。この先、93kmの仮眠所まであまり補給できないとのことなので、しっかり食べておく。

この辺りになるとだいぶランナーもまばらになり、一人で走る時間が長くなってくる。午後になってから曇り空に代わり、だんだん雲も厚くなってきた。午後5時ごろ、ついに雨が降り始めた。雨具を着るかどうか迷う強さだったので、しばらくはそのまま走っていたら、程なく止んだ。薄暗くなってきたので、ヘッドライトを装着して、ザックの赤色点滅灯もつけた。巡航ペースはそれほど変わらないが、小休止は増えてきた。道端でエイド(自動販売機)を見つけてはコーラや、普段は飲まないミルク入り紅茶などを補給した。身体は疲れてきているようで、甘い飲み物が美味しい。ランナー同士の交流の場でもある。はるか遠くに両津の街の灯が見え、まだ遠いなあ、と思いながら進む。

両津市街を抜け、しばらく進むと仮眠所(93km)に到着。ちょうど午後8時。眠れるかどうかわからないが、一応仮眠所を予約しておいた。食事(発泡酒付き)をとり、温泉に入って汗を流してさっぱりしたあと、布団に入るが、目が冴えて眠れない。小一時間ほど横になって身体を休めて、ついでに時計の充電をする。熟睡して寝過ごすのも怖かったので、午後10時前には、支度して、朝食としてのおにぎりと飲み物を持って出発した。

100kmから最終エイドまで

 夜のランニングが始まった。このあとしばらくは睡魔との戦いだった。しばらく登りが続くので歩きを中心に。はるか前方にランナーらしき灯が見える。10kmほど進むとすでに空腹を感じたので、道端に座っておにぎりを食べる。その後、歩き始めて海沿いに出たあたりで、眠くてどうにもならなくなった。「赤亀風島なぎさ公園」(約108km)のあずま屋のベンチに座り、エマージェンシーシートを身体に巻きつけてテーブルにうつ伏せになると、少しウトウトすることができた。10分ほど休んで再開。動くのをやめたせいで身体が冷え、身震いするほどだったので、走り始めた。(ログを見てもしっかり走っていることがわかる)

f:id:Y4H:20191003105454p:plain

ただしそれも長くは続かない。時刻は午前1時ごろで、眠気はピーク。途中、道端で横になっているランナー、トンネルの中で仮眠するランナーなどもちらほら。115km付近の万福寺のそばに空き地を見つけて、完全に横になった。エマージェンシーシートは優秀。完全に風を遮るし、中は暖かい。ここでも15分ほど休んで出発。睡魔のピークは去ったようで、だいぶ走れるようになる。120km頃から、「インターバル走」を始めた。ログを見るとわかるが、1kmおきに走った。周りが暗くて、気を抜くと睡魔に襲われるので、1.2km走って0.8km歩くというリズムを作った。ただし、時計を見ながら距離を気にするのも疲れるので、歩数をカウントした。このころのペースだと、100mあたり120-125歩だったので、これを目安にした。これはかなり有効で、うまく走りに集中できた。120kmから第3エイド(128km)までこの調子で進んだ。

  第3エイド着は3:54。ちょうど女性ランナーばかりが滞在していた。長距離になると女性と年長者が強い。ここで頂いた温かいカップラーメンが美味かった。おにぎりも頂いて、10分ほど横になる。熟睡しているわけではないが、少しウトウトするだけで頭がスッキリする。さらに、完全に横になった方が脚の疲れもとれるようだ。小一時間休んで、4:42出発。

睡魔は去って、再びインターバル走。しばらくすると夜が明け、対岸の本州が見えてくる。

6kmほど進んで海水浴場のトイレを借りる。そこから小木の街に向かって進むが、少し頑張り過ぎてしまったようで、足が止まった。ここからはほとんど歩くことになる。

 

小木の街に入ったのは午前8時半頃。ちょうど、スーパー「たんぽぽ」が開店したばかりで、朝食と、後半の食料を調達。直前に入ったランナーたちは美味しそうにアイスを食べていた。

おにぎりとヨーグルトは朝食としてスーパー近くのベンチで食べ、残りはザックに。この後、サンドイッチを追加で買った。食べているときにご一緒した二人のランナーとはこの後ゴールまでほぼ同じペースで進むことになった。

少々ルートを間違えたものの、小木の街を抜け、宿根木の古い街並みを見てしばらく進むと最終エイドに到達する。

最終エイドからゴール

最終エイド到着は10:25。ここまで来れば、今日中にゴールできるだろう。今夜は是非とも布団で眠りたいと思っていたが、その願いは叶いそうだ。最終エイドもカップ麺、おにぎりなどを頂き、時計の充電をして11時過ぎに出発。

この後、ゴールまでエイドはない。とにかく進むしかない。

f:id:Y4H:20191003105507p:plain

 

もはやほとんど走れない。
最終エイドの深浦からはアップダウンが続く。海岸に出ると強烈な風。台風の影響だろう。雨もパラパラと降り始め、走れない身体が冷えてくるので、レインウェアを着た。しばらくすると後ろからランナーが追いついてきて、「この先、迷い安いので一緒に行きましょう」と。ウォーキングに付き合ってもらうのは申し訳なかったが、せっかくなので一緒に進む。さらにその後もう一人合流。いくつか分岐があったが、いずれも道案内がされていて、少なくとも昼間は間違えることはないだろう。しばらく進んで、迷う心配がなくなったあたりで、二人には先に進んでもらった。
アップダウンが終わると、長い素浜海水浴場。長い直線が始まり、単調になったせいか、再び睡魔に襲われた。170km過ぎのバーベキューサイトで、また横になった。約15分爆睡。

もリフレッシュされたようで残りの直線は、走って進んだが、長くは持たない。その後、再び急な登り、続いて国道の下りを降りて海岸線を進むと、真野の街への長い長い大きな登りを超える。真野の市街地を超えた190km地点、残り20kmを切ったあたりで、足の裏が痛くて立っているのも辛くなり、たまらず座り込んだ。

とはいえ、座っていても事態は変わらない。再び立ち上がって歩き始める。今回、足裏は痛いが、筋力はまだまだ大丈夫。パワーウォークで進めるし、登りは意外に速い。

佐和田の街から海岸に出ると目指すゴールは、見えている陸地を左手を回り込んだところ。残り14km。

この後間もなく日没。2回目の夜を迎える。峠越えに差し掛かった頃はもう真っ暗だが、パワーウォークは健在。いくつかの峠を超えて進むと、前方にランナーが見えた。追いつくと、「たんぽぽ」、そしてその後も何度か出会った方だった。

時刻は19:20頃。残りの距離は3kmあまり。20時までにつけるかもしれない、と思うと急に元気付き、遅いながらも走ることができた。

ところが、進んでも進んでもゴールの「めおと」が見えてこない。「夫婦岩」の道案内ぐらいあるだろうと思っていたが、それも見当たらない。まさかここに来てロストしたか、と不安になりGoogle マップで確認。間違えてはいない。とにかく進んでいくと、ようやく見覚えのある建物が現れた。最後の階段を登り、スタッフに出迎えてもらう。到着は19:56頃。長かったが無事に完走。日曜日中にゴールしたいと思っていたが、予想よりはだいぶ早かった。

ゴール後は暖かい食事とビールを頂き、居合わせた方と乾杯。初の200km超レース完走を祝った。

翌日

最終日は、最終ランナーのゴールの後、朝9時からの打ち上げに続き、両津港へのバスの中でもランニング談義に花が咲き、良い気分で両津港に着いた。フェリー乗船まで座ろうとベンチに腰を下ろした瞬間、気が緩んだのか、深い眠りに落ちていた。なにやら物音に起こされた時は、出航のベルが鳴り終わった後で、予定していたフェリーを逃してしまった。幸い、すぐ後の高速船に乗ることができたので、無事帰宅できたが、少々余分の出費をしてしまった。おそらく、フェリーの中でも2次会で盛り上がったと思われるが、それに参加できなかったのがやや残念である。

まとめ

初めての超ウルトラは、天候にもまずまず恵まれ、佐渡の素晴らしい景色、前夜祭から打ち上げまで超ウルトラランナーに囲まれるという非日常感のおかげで、素晴らしい体験となった。身体への影響は、足裏の痛みが最もひどかった。火曜日になって、足裏、特につま先付近に痺れがあることに気づいた。2週間後の今もわずかに残っていて、やはり相応のダメージがあることがわかった。一方、筋肉痛は大したことはなく、木曜日には軽いジョギングを始めた。終盤、ほとんど歩き通したために、筋肉へのダメージはそれほど酷くなかったようだ。

今回参加していたランナーの多くは、他の超ウルトラも経験しており、その体験談はとても興味深く、ついつい超ウルトラの世界に引きずり込まれてしまった。すでに次のレースを検討し始めている。

 

最後に走行データをまとめる。

 

フィニッシュタイム 37:56:00

走行時間 16:05

歩行時間 14:41

休憩時間  7:10

走行距離 125 km

歩行距離 83 km

平均走行ペース キロ7分44秒

平均歩行ペース キロ10分46秒

 

所要時間の半分は走り、半分は歩いた。距離的には6割をランニングでカバーしている。休憩は4回のエイドと仮眠所での大休止、さらに道端での仮眠など全て含めて7時間余り。

今後の長距離レースの参考になりそうだ。